プロジェクト
ストーリー

世界最小クラスのボディに、
多くの機能を搭載。
世界はそれをどう見たか?
ポータブル型ガスモニター
GX-3R/GX-3R Pro
開発プロジェクト

可燃性ガスや毒性ガスを検知し警報するガス検知器は当社を代表する製品です。特にポータブル型のガス検知器は、米国など海外でも売れ筋の商品。中でも複数のガス種を検知できる「複合型」の新モデルがGX-3RおよびGX-3R Proです。
2019年の発売以来、国内外から高い支持をいただいている製品ですが、その誕生までの道のりは平坦なものではありませんでした。

MEMBER
K.O.
技術
K.O.

1996年入社
技術部

GX-3R/GX-3R Proの電気回路設計を担当しつつ開発チームのリーダー的役割も務める。

R.O.
海外営業
R.O.

2004年入社
海外営業部

北米市場を担当し、本プロジェクトでは営業の代表として要望のとりまとめや販売の要となる。

S.A.
営業技術
S.A.

2012年入社
営業技術部

営業技術として営業と開発チームの間に立ち、プロジェクトの進行管理や広告・各種制作物の製作等を担当。

競争が激しいポータブル型ガスモニター市場。プロジェクト発足前から、構想は始まっていた。
競争が激しいポータブル型ガスモニター市場。プロジェクト発足前から、構想は始まっていた。

GX-3Rの前モデルは2008年の発売。4種類のガス成分を検知することが可能なポータブル型ガス検知器としては世界最小クラスのサイズで、国内外のお客様から高い支持をいただいていました。しかし発売から数年を経た2014年頃には、ライバル社からより高機能な製品が発売されており、新製品で巻き返しを図る必要が出てきました。

R.O.R.O.

ガス検知器の市場としてはアメリカは大きく、競合メーカーも非常に多くて、新技術を搭載した製品が次々に開発されては市場に投入されています。そうした競合の情報は、当社のアメリカ子会社であるRKI社(RKI INSTRUMENTS, INC.)から常に情報が入るのですが、営業としてはそろそろ新製品が必要だなと感じていました。

私は前モデルのGX-2009の開発も担当しましたが、商品リリースの間隔からしても、そろそろ新製品が必要だということで、構想は練っていました。欧州で販売しやすくするために、欧州の規格に沿った新しいセンサが必要だなとか、よりパワーのあるリチウム電池を使いたいとかですね。

K.O.K.O.
S.A.S.A.

新製品開発のためのプロジェクトとして正式に活動スタートするのは2016年なのですが、それ以前の2014年頃から、営業、技術それぞれが構想を練っていた形ですね。営業技術としても国内営業も含めてヒアリングを重ねて、市場ニーズを吸い上げていました。

プロジェクト始動。数多の要望は2種類の製品リリースで解決。
プロジェクト始動。数多の要望は2種類の製品リリースで解決。

2016年、いよいよポータブル型ガス検知器の新製品開発プロジェクトが始動します。さまざまなヒアリングを通じて市場ニーズをまとめた結果、これまで同様の「世界最小サイズ」「海外販売を前提とした仕様」というコンセプトの他に、従来より1種類多い5成分のガス検知、無線通信機能の搭載、他社を上回る7メートルの落下試験のクリアといった要件が挙げられていました。

S.A.S.A.

ヒアリングで営業さんに欲しいものは何ですか?と聞くと、小さくて、安くて、高性能高機能なものが欲しいということになるんです。でも開発チームからすれば、そんな無茶を言われても困る。そこで何を優先すべきか?どこで線引きをするか?というところで、何度も話し合いを重ねました。そこの折り合いをどう付けるかが難しく苦労したところですね。

ライバル製品との対抗上、機能は盛り込みたいけれど、そうするとどうしてもコストが高くなりますから、最終的には2種類の商品を出すことにして、5成分検知と無線通信機能は、ハイスペック版のGX-3R Proの方にだけ搭載するということで話をまとめ、プロジェクトスタートとなりました。

R.O.R.O.
K.O.K.O.

技術の方では、5成分のガスを検知しつつ小型に抑えるために、それまでの2種類のセンサを1つにまとめる方針を立てました。2つのセンサは、原理的に同じものでしたので、少し工夫すれば1つのセンサで2種類のガスが測れる見込みだったんです。センサは主に研究部の担当ですが、ここは難所の一つになるだろうなと思っていました。またリチウムイオン電池の使用と7メートルの落下対策も技術的には大きな課題でした。リチウムイオン電池は大容量ですが安全性の担保が難しく、電気的および構造的に工夫が必要なんです。

私達が小型にこだわるのは、ガス検知器市場の世界的なトレンドも反映しています。近年、ガス検知器は口や鼻に近い部分で検知するのが、安全上より望ましいとされてまして、特にアメリカでは推奨が出されているんです。当社の製品は非常に小さくて軽いので胸元等にも付けやすく、問い合わせも増えていました。ですからこの優位性は保ちたかったんです。

R.O.R.O.
もぐら叩きのようなトラブル対応…。産みの苦しみはやがて延長戦へ。
もぐら叩きのようなトラブル対応…。産みの苦しみはやがて延長戦へ。

開発スタート時には、ヒアリングを行った国内外の営業や海外の子会社、販売代理店に対して、予定される製品概要等が発表されました。国内、海外ともに反応はよく、早く作って欲しいと期待が集まる走り出しでした。

S.A.S.A.

発売は2年後にあたる2018年春頃の見込みとお伝えしていました。後の話ですが、私はその時期から産休に入ることになりましたので、休みに入る前にできるだけやれることをしておこうと、取扱説明書や販売資料をどんどん作っていったんですが……

出せなかったんですよね。そのタイミングでは……。

R.O.R.O.
K.O.K.O.

いやぁ…本音を言うとあまり話したくないんだけど……(苦笑)。全く新しいセンサを開発した為、センサの構造やその電気回路、ソフトウェアの処理、全てが難航し、日程通りには完成できなかったのです。

さらに、他社が製品をアップデートしてきたため、途中からその性能を上回る必要が出てしまって。

R.O.R.O.
K.O.K.O.

結果的には9種類のセンサを開発したんですが、どの条件下でも万全、という域になかなか達しないんですね。3年保証という寿命の条件が加わったり、使用可能な温度の範囲が前モデルより広がって-40℃から60℃まであるんですが、一部の環境でセンサの液が漏れてしまったり、何も無いところなのに数字がふわっと上がってきたり……。原因を究明・修正して評価試験を受けると、今度は違うところにトラブルが起きたりで、予定外に開発が延びてしまいました。

営業や海外の代理店に延期のご報告をした時はとても心苦しかったのですが、開発チームの苦労も近くで見ていたので、そこは誠心誠意ご説明をして納得してもらうしかありませんでした。ただ品質の問題なので、少し待ってでもいいものを出して欲しいという声が多かったですね。

S.A.S.A.
ついに迎えた発売日。苦労が報われ新製品は世界中で売れ始める。
ついに迎えた発売日。苦労が報われ新製品は世界中で売れ始める。

センサ開発チームが厳しい要求仕様にチャレンジを繰り返す中、開発現場をまとめる立場のK.O.はチームメンバーに声をかけ続けながら、解決策を模索していきました。そして2019年春、ついにGX-3R/GX-3R Proは発売開始の日を迎えます。

K.O.K.O.

センサの性能向上は必ずしもセンサの改良だけじゃないんです。カバーする方法は他にもあって、電気回路やソフトウェアの方でセンサの信号成分だけを抜き出して処理してしまうとか、測定したいガスだけを透過するフィルターを工夫するとか、プロジェクト全体でいろんな方法を試しながらなんとか解決しました。

営業側では発売数ヶ月前から先行受注を開始したのですが、かなり注文がありこの製品への期待度を感じました。だいぶお待たせしてしまったのですが、お客様から待ってよかったよと言っていただけたこと、それだけの製品に仕上がったことはありがたかったですね。

R.O.R.O.
S.A.S.A.

当社のメイン製品であるポータブル型ガス検知器待望の新製品でもあり、広告にもお金をかけて会社として新しい試みを色々しています。各国の主要な雑誌やインターネット広告などを使い、今までアプローチしていなかったところへ製品のアピールを行いました。

幸い、やっただけの反響はちゃんと返ってきました。やっぱりものがいいので、打てば響いてしっかり商売に繋がっていく循環になって、営業としては今が攻め時だと感じています。国内でも売れているのですが、やはり海外市場での売れ行きが良いですね。前モデルもまだ販売中で独立した数字は挙げにくいですが、この市場での売上は1年目から約1.5倍になっています。また今までのモデルでは参入しきれなかった欧州市場にもしっかり対応した製品なので、こちらも先が楽しみです。

R.O.R.O.
自分の想いを製品に込め、世の中に届けることができる仕事。
自分の想いを製品に込め、世の中に届けることができる仕事。

最後に今後の抱負や学生の皆さんへのメッセージをお願いしました。

S.A.S.A.

発売直前の時期には立ち会えませんでしたが、後をお願いした同僚や後輩が、いろいろな動画を作ったり、今までにない宣伝広告をして、期待以上の形でこの製品を飛び立たせてくれました。とてもうれしかったですし、そういう風に助け合える仲間がいる職場であることをありがたいとも思います。私は営業の経験もなければ、理系出身でもありません。それでも製品をゼロから生み出すクリエイティブな人たちと一緒に仕事ができる会社なので、そういうところもとても面白く、学生の皆さんにはきっとやりがいを見つけられるのではないかと思います。

私がこの会社でいつも楽しく仕事ができているのは、製品の全てに自分が携わりながら、ものづくりができるためだと思っています。大きいメーカーだと、どうしても一部分の担当に留まりがちですが、理研計器では製品の全てに自分の想いを詰めていくことができるんです。ものづくりが好きな人には本当にいい環境ではないかと思いますよ。
世の中には新しい技術がどんどん生まれてきていますので、それをいかに小さなガス検知器の中に取り込んで、いかに安くていい製品、市場に支持される製品を作れるか、これをこれからも追求していきたいですね。

K.O.K.O.
R.O.R.O.

GX-3R/GX-3R Proは圧倒的に他社のものより小さいんです。初めて手に取るお客さんは、ものすごく驚いて、こんな大きさで、こんなに機能が詰まっているの?と本当にいいリアクションをいただける。そうした良い製品をしっかり持っている企業なので、営業職としても世界に胸を張って売り込んでいける。そういう会社だと思います。
自分達が集めたお客様の声から、今はまだない製品のあり方を仲間と一緒に思い描いて、それを技術が形にしてくれて、世界中からいい反響をいただける。これは本当に楽しくて大きな悦びを得られる仕事なんじゃないかと思いますよ。